木田元先生の訃報に接して

小社刊『対訳 技術の正体』の著者・木田元先生が、
16日に肺炎のためご逝去されました。。
ご生前のご厚情に深く感謝するとともに、
心よりご冥福をお祈り申し上げます。

今朝(19日)の朝日新聞の「天声人語」では、
木田先生の「技術の正体」が紹介されていました。

小社の『対訳 技術の正体』は、
この「技術の正体」の全文(初出は1993年の雑誌「正論」)を収録するとともに、
マイケル・エメリックさんによる英訳を掲載した本です。

文庫化と翻訳書をのぞけば、
本書が生前の木田先生の最後の著作となりました。

本書には、
「春の旅立ち『風の色』」と
「ふたたび廃墟に立って」
という2つの短文も併録しています。

前者は、2012年4月の朝日新聞に掲載された、新入生・新社会人へのメッセージです。
後者は、2011年の河合塾による『「東日本大震災」 復興と学び 応援プロジェクト」で発表された、受験生へのメッセージです。

(この3つの文章を1冊の本にまとめるというのは、木田先生のアイデアでした)

冒頭には、少し長めの「はじめに」を収録しています。
この「はじめに」は、本書のオリジナルであり、
実は、本書のなかでも、もっとも大きいボリュームをしめています。
一節だけ紹介します。

《いつの世にも「時代の勢い」というものがあるが、それに安易に同調したり勝ち馬に乗ろうとしたりすると、とんでもないことになる。戦前、日本が国際連盟から脱退したとき、国民は拍手喝采した。ところが、これによって日本の国際的孤立は決定的になった。私が永年哲学を勉強してきて学んだのは、わからないのにわかったふりをするのがいちばんよくないということだった。世の大勢に流されず、立ち止まってよく疑い、よく考えることが必要なのではあるまいか。》

木田先生のラストメッセージとして、心に噛み締めています。

大塚

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